台風の来ない地域

今年の夏は、ニュースを見れば台風、台風といったい何号まで来たのか、もうわからないぐらいだった。
しかし、うちの地域は、全くと言っていいほど台風が来たことがない。

今年も例外でなく、それだけの数が発生したにもかかわらず、結局かすりもしなかった。

小学生の頃、よく他の地域を羨ましく思ったものだ。
台風で学校が休みになったとか、家が停電になったとか。

今思えば、不謹慎だし、実際味わったらとても大変なことなのに、当時はそれはもう羨ましかったものだ。
外には出れないまでも、台風で休みなんて、体は元気なのにラッキーな休みだな、と思っていたり、停電なんて、なんだかすごくワクワクする冒険のような出来事に思えていたのだ。

それにしても、うちの地域も昔は一度ぐらい台風が来たことはあるのだろうが、今まで一度も台風に関わったことのない地域なんてあるのだろうか。
天気予報を見ていて、ふと思った。

波乗り

先日、太平洋上に台風が発生した。
四国近くを通りながら、北関東や東北に上陸するかもしれないと予報が出ていた。
しかし、結局上陸することなく、いつのまにか温帯低気圧に変わっていった。

普通に生活していると、台風が近づくと警戒するが、一部の人々は台風を歓迎している。
サーファーの人たちは台風が発生すると、生き生きとしている。
普段立たないような波が来るので、海に出たくてたまらないのだ。

私の知り合いは、仕事を休んでまでサーフィンに行こうかと計画していたぐらいだ。
まったくサーフィンをしない私にとっては理解できないことである。
以前、海沿いを友達の車でドライブしているときに、とある駐車場に車を停めて散歩しようということになった。
その駐車場は道の脇に雑草が茂っているような場所を開いて無料駐車場にしている場所。

看板には「歴代のレジェンドサーファー達が切り開いたパーキングを大事に使おう」という旨のことが書いてあった。
なるほど、よく見回すと四駆の車のそばで着替えている人が多いはずだ。
車の持ち主である友達は以前サーフィンをやっていたそうで、その駐車場を知っていた。
レジェンドと言われているサーファーの中には、台風の日に帰らぬ人ととなった方もいるんだとか。

日本海側では、海外のサーフィンスポットのような波が来ないため、台風発生のニュースとともに、いつもは立たない波を求めてサーファーが押し寄せる。
慣れている海なのに、残念ながら命を落としてしまうこともあるそうだ。
命を落としたレジェンドの話を聞くたびに、知り合いが台風の日に海に向かうのを全力で引き留めたくなってしまうのだった。

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