美しさはいつまでも

今までで一番美しい海の夢

昔夢を見た。
海のごくごく近くにある街の夢である。
海の近くというのは坂が多いところが多いが(それもそんじょそこらのだらだら坂ではなく、分度器ではかりたいくらいの急勾配)、その街もとても坂が多かった。

街の中心は崖のてっぺんみたいなところで、そこには大きなお屋敷が建っていた。
お屋敷といっても日本風のではなくて、イタリアとかスペインとか、ヨーロッパの香りがするお屋敷だ。
ちなみに私はヨーロッパへ行った事はない。
燃油サーチャージのことを考えると怖くてとても行けない。
だから、あくまでイメージ主体の夢の話である。
そこに行く途中にも同じようなヨーロッパ風の民家が並んでいる。
とても静かで、誰もいない街だった。
人の気配が全くしない、この街には私一人しかいないのではないかと思うほどであった。
そこから見える海はなんとも広くて、この世から自分だけを断絶しているのではないかと思えた。
あきらかに自分の居場所ではないところなのだが、違う生き物の街や違う世界の街を覗いているような、そんな高揚感があった。
なんてことなく目が覚めてしまったのだが、その後もずっとその街のことが忘れられずに今までいる。
この夢をみてしばらくして、ある一冊の本に出会った。
ある有名な詩人のエッセイなのだが、モルヒネ中毒だった作者が療養の為滞在していた街の話だ。
見慣れた街を散歩していたはずが、ふと気がつくと全く知らないところに来ていた。
見たこともない家並み、見たこともない店。
全く人の気配を感じない。
一人取り残されて焦燥に駆られる。
そんなときふと気配を感じてあたりを見回すと、今まで誰もいないと思っていたはずの街は人間のように動いている猫に溢れていた。
おそろしくなって動転するのだが、結局気を取り直してみると、いつもの街を違う方角から見ていただけのことであった。
そんな話。
私がこの本を読んで得た感覚は、ちょうどあの夢を見たときに得た感覚と同様であった。
こんな同じような気持ちになる本があることに、全身の神経が逆立ったのを覚えている。
それにしても、あの街からみた海は美しかった。
未だにあの海に優る景色には出会えていない。

メイクアップセミナーで学んだこと

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